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いの町の商店街でコーヒースタンドを運営中! オンラインイベントの参加が移住のきっかけに。

2023.11.14

地域おこし協力隊(※以下、協力隊と記載します)の活動を綴る、「こつこつ活動日誌」の“移住した人”シリーズ。

“移住した人”ってどんな生活をしてるの?
“協力隊”ってどんな活動をしてるの?

そんな移住に興味がある方に、移住者のビフォーアフターをご紹介する記事です。

今回は、地方の商店街の活性化に挑戦するために、
2021年11月に、25歳で京都から高知県いの町へ移住された浮木大智さんにお話を伺いました。

(※)地域おこし協力隊とは、都会から地方に住民票を移し、地場産品の開発や地域活動への協力を行いながら、地域への定住を図る取組です。任期はおおむね1年から3年です。詳しくはコチラ


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浮木大智(うきき・だいち)

いの町地域おこし協力隊3年目(2023年11月現在)。大分県出身。
新卒で入社した京都のコーヒー焙煎メーカーで営業として3年半働き、結婚を機に高知へ移住。商店街の活性化をミッションに、2023年1月にコーヒースタンドをオープンした。その他にも、日高村の地域商社nossonで地域のブランディングについて学んでいる。

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はじめて本物のコーヒーを味わったときの感動が忘れられない。
仕事でも休日でも、コーヒー漬けの毎日。

———移住する前は、どんなお仕事をされていましたか?

浮木さん:70年続く京都の老舗「小川珈琲」で働いていました。京都を中心に喫茶店がありますが、全国のスーパーなどにも卸しているメーカーなので、コーヒー好きの方はおそらくご存じだと思います。

僕は家庭用コーヒー豆の営業をしていたので、卸問屋さんやスーパーのバイヤーさんに対して、お客さんが求める新商品や売り場の提案をしていました。また、商品の製造計画や、新商品の開発、販売プロモーションの企画と幅広く仕事を経験させていただきました。

会社の中でも売上が大きく、付き合いの長いお客さんが担当だったので、日々のプレッシャーは大きかったですね。

———もともとコーヒーが好きだったんですか?

浮木さん:ここだけの話、入社するまではコーヒーが特別好きではなかったんですよ。眠気覚ましの缶コーヒーくらいしか飲んでいませんでした(笑)。でも、就活中に小川珈琲の本店で初めてコーヒーを飲んだ時、当たり前ですがめちゃくちゃ美味しかったんですよね。苦みだけではない複雑な風味が口の中にふわぁ〜と広がって「これが本物のコーヒーか!」って1人で感動していました。

入社してからは「社員全員が珈琲職人であれ」という社風から、仕事の中でコーヒーの味覚テストや、インストラクター検定への受験など、コーヒーの勉強をたくさんさせてもらいました。また、初心者向けにコーヒーの淹れ方を教える教室もしていました。

そんな仕事をしながら、休日にはおいしいコーヒーを求めてカフェ巡り。完全にコーヒーの世界にのめりこんでいきましたね。

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自分が本当にやりたいことってなんだろう。
地域で活躍している会社の元先輩を見て、そう思った。

———いつごろから移住に興味を持ち始めたんですか?

浮木さん:入社する前から、定年まで同じ場所、同じ会社でとは考えておらず、いずれは九州に帰りたいと思っていました。僕の出身は大分県で、大学は宮崎県。生まれてから22年間を過ごした九州が大好きで、僕にはのんびりした田舎の方が合っているとずっと感じていました。

そんな中、入社して3年目の時に新型コロナが大流行。もともと家の中よりも、外に出てアクティブに活動するタイプだったので、外に出られないことが本当にストレスでしたね。そのおかげで登山やキャンプなどのアウトドアにハマるきっかけになったんですが……。

人口の多い都会は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が何度も発令され、外出という当たり前の自由が制限される毎日に次第に違和感を覚えました。そんなことをきっかけに、いつかはと思っていた田舎暮らしを、近い将来の夢としてイメージするようになったんです。
 
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———地域おこし協力隊に興味を持ったきっかけを教えてください。

浮木さん:地方で出来る仕事を探している時に見つけたのが地域おこし協力隊でした。協力隊って、最大3年間も行政で勤めながら、起業に向けた準備ができるんですよ。将来、絶対起業したい!という考えはありませんでしたが、大学時代にはサークルを立ち上げたり、お祭りの企画を考えたり、ゼロから自分で生み出すことは好きでした。そのため、一定の収入を得ながら、その地域でやりたいことを見つけ、起業に向けた準備ができるのは、面白そうだと思いましたね。

「地方に移住して、協力隊になりたいんですよね〜」って周りに話しているうちに、会社の元先輩が岐阜県の協力隊をやっていることを知り、すぐに話を聞きに行きました。その方は、地域の素材を活用してクラフトコーラを作っていること、商品の開発から営業、企画までを手がけていることを知りました。

先輩のクリエイティブな仕事に憧れましたし、好きな地域に貢献できるのはやりがいが大きいだろうな、と。3年半ほど企業で働いたけど、僕も「自分でワクワクする仕事を生み出して、地方に貢献したい」という気持ちが強くなりましたね。

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高知はとにかく自分の肌に合った。
理想の働き方をされている方がいる「いの町」に移住を決めた。


———でも九州ではなく、高知を選んだんですね。なにか理由はあったんですか?

浮木さん:九州は大好きでしたが「別の場所で経験を積んで、最終的に帰れたらいいかな」と思ってて。あと、付き合っていた彼女と結婚したいと思う中で、今後の子育てとかを考えると、彼女の地元である高知に帰るのがいいんじゃないかと思いましたね。

もちろん、何度か高知に遊びに来るうちに、僕が高知のファンになったことも大きかったです。ひろめ市場とか日曜市とかは、ぜひ行ってみてほしいですね。県民性だと思いますが「ようきたね〜」と言って、とにかく県外の人を温かく迎え入れてくれます。あと、南国特有の食べ物や自然が、生まれ育った九州に似ていて、直感で「ここは僕に合っている」と勝手に思っていました(笑)。


———はじめは、高知の中でも仁淀川流域の3市町村で悩んでいたそうですね。

浮木さん:そうなんです。岐阜の先輩からは「高知でクラフトコーラを作っている知り合いがいて、今度イベントがあるから出てみたら?」と紹介されていたので、仁淀川流域の日高村、土佐市、いの町の合同オンラインイベントに参加してみました。

色んな移住イベントに参加しましたが、僕はこの3市町村の人たちに一番惹かれました。行政の方は明るく、協力隊OBOGの方は、ゲストハウスや地域商社の立ち上げなど、地域を巻き込んで事業を立ち上げた人ばかり。各市町村同士も和気あいあいとしている姿が印象的でした。ぜひ直接会ってみたい!と思いましたね。

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———それで、イベントの後すぐに、3市町村に遊びに来たそうですね。実際に来てみてどうでしたか? 

浮木さん:いやもう本当に楽しくって!移住するまでの半年間で3回も遊びに来てしまいました。それぞれの市町村の方や、協力隊OBOGの皆さんは、初めてにもかかわらず自宅でパーティを開いてくれたり、忙しい中で地域を案内してくれたり……。なんておもてなし精神の強い方々なんだと感動しました。

実際に来てみると、この3市町村は高知市内に近いにも関わらず、日本一透明度の高い仁淀川がすぐそば。アウトドアが好きだった僕にとって、それはものすごく魅力的でした。


———最終的にいの町を選んだのは、なぜだったんですか?

浮木さん:いの町でいろいろな事業を展開している小野義矩さん(※)の存在が大きいです。僕が移住イベントに参加するきっかけになった方でもあります。高知初のクラフトコーラの開発だけでなく、6市町村にまたがる自転車イベントの企画や、古民家をリノベーションしたカフェの運営もされていました。

小野さんはご自身のアイデアをいくつも実現されていて、地域でのその仕事ぶりがとても理想的でした。この人の近くで学びながら働いてみたいと思い、いの町に移住することを決めました。

(※)小野さんの活動記事はコチラ
   
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自分がワクワクすることを大切に。
コーヒー屋を通して「いの町」を盛り上げるために、まずは仲間集めから。


———移住1年目はどんな活動をされていたんですか?

浮木さん:僕の協力隊としての仕事は「商店街の活性化」です。

着任してすぐに、地域のみなさんに挨拶回りをした時「商店街で遊ぶ子どもが減ってさみしい」ということをよく聞きました。でもいの町は人口が2万人もいるし、近くに小学校もある。僕も子どもが遊べる場所は少ないなと感じましたが、親子で楽しめるコンテンツを作れば、また子どもたちの声が返ってくると思いました。

そこで、商店街を舞台にした謎解きや宝探しをやったらどうだろう?と。商店街のいろいろな場所に暗号を隠し、すべてを集めるとお宝のありかがわかるという仕組みです。役場のOKも出て、商店街の方たちの協力も仰ぎました。店主と子どもたちとの交流が生まれるよう、店舗の中にも暗号を隠しましたね。

100人程度の集客を見込んでいましたが、実際には500人以上が参加し、当日はいつになく商店街が盛り上がりました。お店の方も「久しぶりに子どもたちと喋った」と喜んでくれましたね。

このイベントを通して、僕も自分のアイデアを実現して、地域に貢献できることにやりがいを感じました。準備も当日も、ワクワクが止まらなかったですね!

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———そのイベントの後、コーヒー屋さんを始めたんですよね。

浮木さん:はい。イベントは大成功ではありましたが、人手が必要だし天候にも左右されるし。個人の事業として続けていくのは難しいと思いました。
 
ならば、この場所で自分が続けていくことができて、イベントのように地域に貢献できることはなんだろう、と改めて考えた時に思い浮かんだのがコーヒーショップでした。前職で培ったコーヒーの知識や経験も生かせるし、継続しながらイベントのような地域のつながりも作れると思いましたね。ただ、いきなり店舗を構えるのは資金的にハードルが高かったので、まずはイベント出店からスタートしました。


———準備は大変ではなかったんですか?

浮木さん:そこまで大変ではなかったですね。前職がコーヒー屋だったのでコーヒーの抽出道具は持っていたし、コーヒー豆はいの町の焙煎業者のコーヒーが気に入っていたので、そこから購入しました。足りない机やテントは、最初は借りていましたね。

最初に出店したイベントも「いの町」でした。協力隊は役場に所属しているので、普段から観光協会とも繋がりがあり、立て続けにイベントに呼んでもらえましたね。

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———今では店舗を構えていますよね。
 
浮木さん:そうなんですよ!イベント出店を半年ほど続けていると「店舗はどこですか? ぜひ行きたいです!」というお声をいただくようになりました。地域の中で認知も広がってきたし、そろそろ店舗を構えてもいいかなと。偶然にもその時、小野さんが運営していたカフェの店舗をだれかに貸そうとしていることを知って「こんなチャンスはない」と思い、すぐに手を挙げました。


——どんなお店、どんな場所にしたいと思っていますか?

浮木さん:お店の名前は、苗字をとって“UKIKI COFFEE STAND”。名前聞くだけでワクワクするねって言われますね(笑)。僕が大切にしていることは「面白いことを考えている人を集めるコーヒー屋にする」ということです。イベントを企画した経験から、商店街を盛り上げるには1人では継続できないと思っているので、色んな人を巻き込んで仲間を増やしていきたいですね。


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———仲間を増やすために、具体的に取り組んでいることはありますか?

浮木さん:色んな方とのコラボに力を入れています。周辺にパン屋がないのでパンを仕入して販売したり、知り合いの植物好きの人と観葉植物の販売会などをやっています。また、コーヒーを飲みに来てくれたお客さんが、お店の庭を見て「ここでヘッドスパをすると気持ちよさそう」と言ったので、その方の知り合いを交えて、一緒にイベントをしたこともありましたね。

その他にも、いろんな人に来てもらえるよう、お店をレンタルスペースとしても活用しています。今は、月に1回いの町在住の漫画家さんがDJ BARをやってくれていますね。別のコーヒー屋さんにもお貸しする予定です。
 
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目標は「いの町」への定住。
自分のワクワクすることにチャレンジしていきたい。


———コーヒーショップを運営する一方で、日高村にインターンにも行かれていますよね?

浮木さん:そうなんです! 日高村の地域商社nossonに週1回インターンに行っています。

nossonは移住前に参加したオンラインイベントを主催していた会社で、『いきつけいなか』というサイトを運営しています。これは、移住した人の活動などを紹介して、地域に興味を持ってもらい、その人のいきつけの場所になってもらうように設計されており、この取り組みがすごく面白いなと思いました。

僕は移住前にその地域でどんなことが出来るのか、どんな人がいるのかを、もっと知れたら良かったなと思っていたので、いの町でもこのようなサービスを作りたいと思いました。そこで日高村とnosson、いの町も交えて相談をした上でインターンに来ています。
   
———インターン先では、どんな仕事をしているんですか?

浮木さん:いの町の協力隊の活動を取材して記事にする「ライティング」というお仕事です。僕が書いた記事(※)も『いきつけいなか』に掲載していただいています。どんどん記事を増やして、いずれはいの町オリジナルのサイトを作れたら理想ですね。

(※)浮木さんが書いた記事はコチラ

またnossonでは、プロフェッショナルの方から、ライティングの講座やマーケティングを通した事業の相談会など、学べる環境があります。この機会は積極的に参加して、自分の事業に生かして行きたいですね。

———これからの目標を教えてください!

浮木さん:いの町は本当に最高の住み心地だと実感したので、これからもここに住み続けたいと思っています。そのためには、一定の収入を継続的に得る必要がある。協力隊での3年間のあとも暮らしていくために、この町でできること、必要なこと、自分がワクワクすることを考えて、小さなチャレンジを積み重ねたいですね。

コーヒー屋だけでなく、ライティングもやったり、仲間を集めてイベント企画をしたり……。自分の好きなことや得意なことで、これからも「いの町」を盛り上げます!

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こつこつ活動日誌

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