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林業を生業にするため林業学校で研修中!自分のやりたいこと全部詰め込んだ生活を!

2021.10.13


今、森で起きている問題は他人事じゃない。
だから、僕は真っ暗だった森に
光を届ける仕事をする。

小川稔さん

高知県日高村の地域おこし協力隊1年目。地域おこし協力隊になる前、東京から家族3人で高知県に移住をし、バイオマス発電所で働いていた。その中で、今、森林では深刻な問題が起きていることを知る。それから『森林を守る仕事をしよう』と、地域おこし協力隊として活動を開始。現在、“NPO法人土佐の森救援隊”に所属し林業学校での研修を受けながら活動をしている。

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Q.日高村の地域おこし協力隊になったきっかけは何ですか?
A.『師匠と一緒に森林を守る仕事をしよう。』そう思った。

「地域おこし協力隊になる前は、バイオマス発電所で働いていました。バイオマス発電は、動植物などから生まれた生物資源、例えば、木材や生ゴミなどを燃料にして発電します。化石燃料のような有限な物質を消費しないので、“再生可能エネルギー”として注目されているんです。

僕が働いていたバイオマス発電所では、木をチップにしたものを燃焼することで発電していました。しかし、ある頃からチップにする用の木が足りなくなってきて…それをきっかけに、実は木のチップを作るために森林の皆伐を行っていることを知ったんです。

山の一部が木が一本も生えていなくて丸裸になっているところみたことないですか?

それが皆伐されてしまったところ。ある範囲の木を全部切ってしまうことを“皆伐”と言います。皆伐されてしまったところには、雨をさえぎる樹木や落葉がなくなり雨が土壌に直接降る。しかも、木の根による水の保持力は弱くなっているので、土砂崩れなどの自然災害を引き起こしてしまうんです。

僕がやっている仕事が間接的に山や森といった自然環境を荒らしてしまっていることに気がついたんです。
それから『身近で起きている問題から目を背けてはいけない。問題を解決しながら、新たなルートで木のチップを確保するこはできないか』と考えるようになりました。

そんな時に、僕の師匠“NPO法人土佐の森・救援隊”の理事と出会ったんです。“NPO法人土佐の森・救援隊”は、日高村を拠点に高知県内の森林を整備をし、自然環境を守るための活動をしている団体です。」

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「師匠とは、とにかく“森林”についてたくさん話しました。
大規模な皆伐をせず、小規模の林業をする人が増えれば木を切っても森は荒れないこと、災害に強い森を保つことがこれからの時代にどれだけ大切かとか…

その話の流れで、『今ちょうど林業をやってくれる地域おこし協力隊を募集してるから、一緒に小規模林業をやってみない?』って師匠から誘われたんです。『この人と一緒に森林を守る仕事をしよう。』そう思って、僕は日高村の地域おこし協力隊になりました。」

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Q.地域おこし協力隊として、どのようなお仕事をされていますか?
A.1年中真っ暗だった森林を、光がさす美しい森林に変えていく仕事をしています。

──小川さんの話によると、戦後、日本が復興するためにはたくさんの木材が必要だったため、人工林がいたるところに作られた。しかし、その後外国産の安い木材が輸入され、国産材の需要が一気に減少。売れない木材のために林業をし続ける人も減少してしまった。結果として、手入れされていない人工林が増えてしまったという。

本来、森林は人間が手を入れて整備をする必要はないはずのもの。しかし、「人間の手によって作られた人工林は、根気強く手入れをし続ける必要があるんです。」と小川さんはいう。


「人工林は、人間が意図的に密集させて木を植えているため、木が切られなくなると、互いの成長の邪魔をしてしまうんです。
それに加え、増えすぎた木の枝や葉が太陽の光を遮り、光が地面までとどかなくなる。
光が届かなくなると、地面に植物が育たなくなる。
いろんな植物が育たなくなると、エサがなくなり生き物もいなくなる。
生き物がいなくなると、糞などによる土の養分もなくなる。
最終的に、木一本一本が細くなって、根もしっかり張れなくなってしまうんです。

手入れされない人工林が増えることは、山の様々な機能が衰え、土砂災害などの自然災害を引き起こすリスクが高くなってしまうんですよ。

そんな人工林の悪循環をくい止めるためには、木がお互いの邪魔をしないよう適切に木を切ること、地面までしっかりと太陽の光をとどけることが必要なんです。
1年中真っ暗だった森林に日の光を届け、いつか美しい森林に戻すため、僕は木を切っています。」

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「でも、一度人間が作った人工林を、人間が手を入れる前の森林と同じような環境に戻すのは、そんなに簡単なことではなく、何十年ものスパンでかかること。まだ誰もやり遂げていないんです。

これだけ広がった人工林を元に戻すには、現在の規模で頑張っていても難しい…だから、生業として何百人、何千人、何万人と森に関わる人を増やしていく必要があります。より多くの人にこの仕事に携わってもらうための方法を、今、模索しているところです。」

Q.森を守る林業を行うにあたって、小川さんはどのようなことを大切にしていますか?
A.とにかく、自然に対する敬意を忘れない。

「自分の中で決めていることは、『虫を殺さない、余計な木を切らない、できるだけ壊さない』です。変な人だなと思わずに、聞いて欲しいんですけど、森林と会話しながら、作業しています。本当に集中していたらあるんですよ。『ここをこうしてくれたら元気になるから』って森林が言ってくれる。その声にしたがって、僕は整備しています。

あと、木って生きている。だから、僕が切ろうとしたら木が“緊張している”のを感じるんです。心苦しいと思いながら、毎回切っています。そうやって切らせてもらった分、『切り出した木は有効に使わなければ』という気持ちになりますね。

森林って神聖なところなんです。気を抜いてしまうと、森林の中は事故が多くなってしまうので守ってもらうという意味もこめて、一礼して森林に入る。とにかく、自然に対する敬意を忘れないことを大切にしています。」

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Q.この仕事はどのような人に合いそうですか?
A.自然が好きな人なら、性別も年齢も経験も関係ない。林業は誰でも始められます。

「自然が好きな人なら誰でもできる仕事だと思います。林業って力仕事というイメージが持たれやすいんですけど、そんなことなくて、機械も使うので力は必要ありません。おじいちゃんおばあちゃんになっても続けられる仕事です。最近、僕の周りでは20〜30代くらいの若い人がふえてきましたし、高知に移住をして林業を始めている女性も結構いるんですよ。

僕はここに来るまで林業をしたことはなかったので、今はまず林業学校での研修を受け、日々学びながら仕事をしています。自然が好きで林業をやりたいと思えば、僕みたいに経験がなくても林業は始められます。それをもっと多くの人に知って欲しいですね。」

Q.高知にきて、出会えてよかったなと思う方はいますか?
A.日高村の隣町である佐川町の滝川さん。
悩んだことや困ったことがあるとすぐに相談できます。

「日高村の隣町である佐川町の元協力隊員で、現在も佐川町で林業をしている滝川さんです。以前は編集者をされていて、東京から移住してから林業をはじめ、生業として8年間“自伐型林業”をされてきた経歴を持っています。

“自伐型林業”とは、ひとことで言うと「経済的にも資源的にも持続可能な林業」。小さな機械を使って、自ら山に道を作り、自ら木を切り、自ら木材を運び出します。小規模の面積の中で手入れをし続け、永続的に林業で収益を上げるために、皆伐や造林などを行わないことが特徴の林業です。また、“自伐型林業”を始めるために必要な費用は比較的安く、行政の補助金も使うことができるので始めやすいことも特徴です。

そんな“自伐型林業”を率先して行っている滝川さんのことは、全国で林業をやっている人なら多くの方がご存知かと思います。そんなすごい方が隣町にいるので、悩んだことや困ったことがあるとすぐに相談できるし、実際に滝川さんの山に行って勉強させてもらっています。近くにそういう方がいるのは、やっぱり心強いですね。」

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Q.休日はどのように過ごされていますか?
A.休日は息子と一緒に遊ぶ日!

「休日は息子と一緒に遊ぶ日ですね!高知市内にも車で30分くらいでいけるので、イオンで遊んだり、家の近くの小学校でサッカーや野球をしたりしています。

他にも、高知県内の美味しいものを、食べ歩きをしてるんです。今まで行った中で、一番のおすすめは620円でちりめんかけ放題ができる“土佐角弘海産”。朝採れた新鮮なちりめんを、あつあつの白ご飯に、自分が好きなだけかけて食べる、そんな贅沢なことが620円でできちゃうんですよ!最高でした。

ちなみに、ご飯のおかわりは禁止なのに、ちりめんのおかわりはいくらでもできます。普通、逆な気がしますよね(笑)午後に行くとちりめんがなくなっている可能性もあるので、高知県に来た際には、ぜひ、午前中にいってみてください。」

Q.協力隊の卒業後はどのような活動をしていく予定ですか?
A.自分のやりたいこと全部詰め込んだ生活をしようと思っています(笑)

「林業と農業とカフェの兼業をしようと考えています。林業の繁忙期は10月〜3月頃。そのため、比較的に4月〜9月は兼業する時間を確保しやすいんですよ。

『自分で栽培した有機野菜を使った料理を振る舞うカフェを経営をしてみたい』という想いがずっとあったので、この際挑戦してみようと思います。実現に向けて、着々と準備を進めています。すでにカフェをする古民家の目星もつけているし、再来年には日高村内にある日高酒蔵ホールで月に一回、自分の料理を食べて批評してもらう会を開催する予定なんです。その時期採れたての旬の食材を使って、食べた人が季節を感じられるような料理を作りたいと思っています。

そんな感じで、林業と農業とカフェの兼業、自分のやりたいこと全部詰め込んだ生活をしようと思っています(笑)」

小川さんが活動中の“木の駅ひだか協力隊”についてはこちらから
https://nosson.jp/recruit/post2021092404/

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