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“半ダンサー×半生姜農家”として日高村へ。 ここで感じた『変わっていくものと、残していきたいもの』

2022.01.03

久保田 舞/Mai Kubota
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1995年生まれ。埼玉県立芸術総合高校にて舞台芸術を学び、大東文化大学スポーツ科学科入学後モダンダンス部に所属。卒業後は作品制作・上演を国内外*で行いフェスティバルでの作品上演や、シンガポールではレジデンスを経て現地アーティストと共に作品制作に取り組んだ。近年は他ジャンルアーティストとの共演や、オペラへのダンサー出演、在住する川越市にて野外パフォーマンス企画の開催に取り組むなど活動の幅を広げている。
村とアーティストとの間に長く続く関係の最初の接点をつくることを目的に『アーティスト・イン・レジデンス(注)事業』を始動した高知県日高村へ、第1号のアーティストとして来村。日高村の生姜農家である壬生(みぶ)農園に10日間滞在し、“半ダンサー×半生姜農家”として活動を行った。

*M1 Contact Contemporary Dance Festival/ NDA International Festival/福岡ダンスフリンジフェスティバル/TPAM 受賞歴:座・高円寺ダンスアワード/横浜ダンスコレクション2017コンペティションⅡ 奨励賞/HDP ~新たなる挑戦~ コンペティション部門 鈴木ユキオ賞

(注)アーティストインレジデンスとは
アーティスト・イン・レジデンス(Artist in Residence、以下、AIR)とは、国内外からアーティストを一定期間招へいして、滞在中の活動を支援する事業をいう。わが国においては1990年代前半からAIRへの関心が高まり、主に地方自治体がその担い手となって取り組むケースが増えてきている。


Q:アーティスト・イン・レジデンスで、日高村を選んだのはなぜですか?
A:知り合いのアーティストさんに紹介してもらったんです。

もともとは、私の知り合いのアーティストさんがアーティスト・イン・レジデンス事業で、高知県いの町の和紙会社に来て活動をしていたんです。和紙会社の方が隣の日高村でもアーティスト・イン・レジデンス事業が始まるから、興味ありそうな人いるかなと探していたみたいで。そのアーティストさんが和紙会社の方に私のことを紹介してくれたんです。私もちょうど地方でのアーティスト・イン・レジデンスに興味を持ち始めていたので、ぜひと日高村に来ました。


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Q:アーティスト・イン・レジデンスに興味を持ち始めたのはきっかけはありましたか?
A:地元で行った野外パフォーマンス。地域と舞台芸術の関わりをもっと密接にできないかなと思うようになりました。

2020年はコロナ禍ということもあって、都内の劇場などではアーティスト活動ができなくて…。今だからこそ、何かできないかなと考えた時に、野外パフォーマンスをしたいなと思ったんです。野外であれば観客同士も密集しにくいから、出る側も観る側も安心かなと。そのタイミングで、ありがたいことにサポートしてくれる人もいたので、地元の川越での野外パフォーマンスが実現しました。

普段、都内を中心に活動をしているので、私のパフォーマンスを地元の方々に観てもらう機会って、なかなかないんです。だけど、そのイベントには地元の方々がたくさん足を運んでくださって、私のパフォーマンスを観ていただけたんです。それがとても嬉しくて、地域と舞台芸術の関わりをもっと密接にできないかなと思うようになりました。

それまで私が地域との関わりを意識していなかったから気づいていなかっただけなのか、コロナ禍というタイミングだったから増えていたのかわからないんですけど…
その頃から、地方自治体のアーティスト・イン・レジデンスの募集を多く目にするようになり、自然に興味を持ち始めました。

Q:普段関東ではどのような活動をされていますか?
A:劇場やギャラリースペースで作品発表。

最近は、少しずつではありますが舞台のお仕事をできるようになってきていて、都内の劇場でダンサーとして出演したり、ギャラリースペースで自分の作品を発表したりしています。11月にも控えている舞台の本番があります。でも、それがなければ、ずっとここにいたかったですね。代役立てるか!って一瞬思っちゃうくらい(笑)

Q:高知に来る前と、実際に来てみてイメージは変わりましたか?
A:来る前は未知でした。

大きくイメージが変わったところはない…というか、実は、ここに来るまで高知どころか四国さえも訪れたことなかったんです(笑)だから、来る前は未知すぎて高知に対してこれといったイメージ像があったわけではなくて、川が綺麗で有名らしい…くらいでした。実際に、日高村を流れる仁淀川を見て、やっぱり圧倒されましたね。写真や話を聞いただけではわからない美しさを生で感じて。こんなに綺麗な川は、なかなかないです!四国で初めて訪れたのが日高村で本当によかったなと思いました。

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Q:日高村ではどのような生活をしていましたか?
A:インプットすることが山のようにあった。

朝8時から夕方の4時半までがお仕事でした。生姜の芽取り、洗い、大きさの選別、袋詰め、段ボール詰めまで、一連のいろんな作業をさせてもらいました。
仕事終わりには、川に釣りに行ったり、家から川まで散歩をしたりしていました。釣りは、私が『釣りをやったことがない』って言ったら、壬生さんの小学校5年生の息子さんが川釣りに連れて行ってくれたんです(笑)

日々の生活は、今までやったことないことばかりで、毎日が勉強でした。大人になると、生活の中で新しいことが入ってくるってなかなかないんです。でも、ここに来て新しい人に出会って、新しいことに触れて、インプットすることが山のようにあった。だから、夜はその日にインプットしたことを整理する時間にしていましたね。1日が足りなくて、あっという間でした!

でも、『まだ、2日間しか経っていない!』って感覚もあったんです(笑)
濃くて充実していたから、朝のことさえもすごく遠い記憶な気がする。だけど、楽しくてあっという間だから、24時間じゃ足りない。不思議な感覚ですよね。東京で過ごす10日間と、ここで過ごす10日間は、時間の流れも感覚も全く違いました。本当に、日々の生活で満たされましたね。

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Q:お休みの日はどう過ごされていましたか?
A:できるだけ働きたかった。

高知市内で毎週日曜日に行われている日曜市に行きました。もともとは、中日二日ともお休みをもらう予定だったんですけど、せっかく来たのに休むのはもったいないなと思って、休みは日曜市の日だけにしていただきました。日々やる作業も違うし、同じ作業だとしても変化するから。できるだけ働きたいと思ったんです。

Q:一番印象に残っていることはありますか?
A:何気ない日常が温かい。

日々の全て同じくらい印象に残っています。ここに来るまで、土に埋まっている生姜も、生姜の葉っぱも見たこともなかったし、とにかく見るもの全てが新しかったんです。その中で印象に残っているというか、とても好きな時間がありました。

生姜の芽を取る作業をしながら、他愛もない話をしたり、あったかい飲み物とお菓子を食べながらみんなで休憩をする時間。近所の人も、職場の人も、みんな家族だな〜って感じて、何気ない日常の場面ですが、温かくてとても好きでしたね。

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Q:この滞在期間でどのようなインスピレーションを受けましたか?
A:『変わっていくこと』『失っていくもの』『残していきたいもの』に対してアプローチしたい。

日高村で作品の“カケラ”をストックした感じです。

川まで、散歩をした時にいろんなお話をしてもらったんです。『川が昔はここまであったんだよ。』とか『最近はここまで動物が降りてくるようになってね。』とか『田舎は人がどんどん都会に行ってしまって人がいなくなって、人手が足りない。』とか。

ここでいろんなお話を聞いて、ここで生活をしていると、自然も人も全て常に変化していることを肌で感じました。だから触れているものに対して、豊かで敏感になりました。生姜だってどれひとつとして同じ形のものはないし、道端に咲いていた花が枯れることもある。
そんな風に変わっていく中で、失っていってしまうものもあるけれど、必ず残していきたいものってあるじゃないですか。日高村だと特に、仁淀川とか。ここの動植物がこんなにも豊かに過ごせるのは、この川があるからだなと思うから。

そういう『変わっていくこと』『失っていくもの』と『残していきたいもの』日高村で感じた“カケラ”を集めて、ひとつの作品にできたらと思っています。日高村で受けたものから生まれた作品を関東で発表したいです。もちろん、その前に日高村に戻ってきて発表したいですね。

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